京都府南部の山城地域は茶栽培に適した気候風土で、高山寺の明恵上人が里人に茶の栽培法を伝授して以来、800年にわたってお茶の栽培・加工を行ってきました。
それが「お茶の京都」と言われるゆえんですが、今回は山城地域でも西のエリアにある史跡などをご紹介しましょう。
寛永文化の中心・松花堂昭乗ゆかりの「松花堂」
江戸時代の寛永年間に、古典を復興させつつ洗練された文化芸術が発展しました。その中枢にいたのが、石清水八幡宮の社僧だった松花堂昭乗です。茶の湯を盛り立て、書画や庭園・茶室づくりにも才能を発揮していました。
国の名勝に指定されている庭園は、約2万㎡の広大な敷地に四季折々の草木が植えられ、特に200本を超える椿が見事。また、草庵「松花堂」や泉坊書院をはじめ松隠・竹隠・梅隠の三茶室が、路地庭と相まって趣ある景観を創出しています。
入口に建つ美術館には、昭乗の書画やかつての内装品などが展示されています。また、京都吉兆の支店があり、昭乗が愛用した仕切り付き塗り箱を元に考案された「松花堂弁当」が味わえます。
※平成30年の地震で被災して復旧工事中のため、現在は草庵・書院を含む内園の見学はできません。
入園時間:9:00~17:00(入園は16:30まで) 月曜・年末年始休
入園料:大人300円/学生220円/小人150円(美術館は別途400円)
場所:京都府八幡市八幡女郎花43-1
電話:075-981-0010


松花堂昭乗の草庵がもとあった「石清水八幡宮」
八幡市の男山は木津川・宇治川・桂川が合流して淀川となる地であり、京都と難波を結ぶ交通の要所であり、都の裏鬼門にあたります。ここに平安時代初期、八幡大神のご神託によって祀られた古社。日本三大八幡宮の一つで、社殿は日本最古最大の八幡宮造として、本社10棟・棟札3枚が国宝に指定されています。
かつて男山の山中には多くの僧坊があり、その一つ、瀧本坊の住職だったのが松花堂昭乗です。山内にあった泉坊書院や昭乗が隠居した草庵が、明治時代に松花堂庭園へ移築されました。
なお、男山一帯には茶の湯に最適な「八幡五水」が湧き出ています。「閼伽井」以外は現存していて、石清水社の「石清水」、高良神社の「藤井」、頓宮北門前の「筒井」、相槌神社の「山井」は今も清らかな水がいただけます。
石清水八幡宮へは、京阪電車の石清水八幡宮駅から山頂まで歩けば30分以上かかりますが、ケーブルカーなら3分で上がれます。男山展望台からの眺めも壮観!
拝観時間:6:00~18:00(ケーブルは8:10~18:15、駐車場は9:00~16:00)
場所:京都府八幡市八幡高坊30
電話:075-981-3001


一休さんが晩年を過ごした「酬恩庵」
もともと妙勝寺という寺を、大応国師が禅道場として改めたのが「酬恩庵」の起こりです。その後、元弘の戦火で荒廃していた道場を一休禅師が再興し、宗祖の恩に報いるという意味で酬恩庵と命名しました。
とんち話で知られる一休は建仁寺で修行し、大徳寺を再興して塔頭の真珠庵を開山。63歳で酬恩庵に移り住み、88歳で亡くなるまで住職をしていたことから「一休寺」の愛称があります。
一休は「茶を点てるのも禅も本質は同じ」という「茶禅一味」の心得を村田珠光に伝授して、それが侘び茶につながりました。東山から境内へ移築された「虎丘庵」は一休が茶の心を伝えた草庵で、茶道の原点といえる場所です。茶室造りの風雅な庵が面する庭園は、村田珠光の作庭と伝えられています。
拝観料:大人600円/中高校生300円/小学生200円
拝観時間:9:00~17:00(宝物殿は9:30~16:30)
場所:京都府京田辺市薪里ノ内102
電話:0774-62-0193


時代劇の撮影にも使われる「流れ橋」
木津川に架かる橋で八幡市と久御山町、城陽市を結び、現存する木橋の中では日本最長級の全長356.5m。正式名称は上津屋橋ですが、川が増水したとき床板が浮き上がって流れる設計になっているため、「流れ橋」の愛称で親しまれています。昭和28年に架けられて以来、23回流されており、平成28年には一部を鉄筋コンクリートで補強して橋面も嵩上げされました。
周辺には覆下茶園が続き、人工物のない風景に溶けこ込んだ橋は時代劇ロケによく利用されています。
場所:京都府八幡市上津屋宮前川端
電話:075-981-1141(八幡市観光協会)

そぞろ歩けばお茶の香り漂う「上狛茶問屋ストリート」
JR奈良線の上狛駅から西へ5分ほど歩くと、木津川へ至る奈良街道の両側に茶問屋や製茶場が並んでいます。界隈は茶の栽培・加工が盛んで最盛期には120軒の茶問屋が軒を連ね、木津川水運によって全国へ、さらには神戸港から世界へ出荷されていたのです。
現在も30軒ほどの製茶工場や茶問屋が並び、「茶問屋ストリート」と呼ばれ親しまれています。一角には山城茶業組合創業120周年を記念して建てられた「山城茶業之碑」や、茶の資料館を併設した店舗もあります。
この通りだけでなく、一帯には江戸時代から町割の変わらない大規模な環濠集落があって豪農屋敷も点在し、古民家好きにも必見のエリアです。
場所:京都府木津川市山城町上狛
電話:0774-39-8191(木津川市観光協会)

CHABANASHI いかがでしたか?
暮らしを彩る「ちょっとタメになる話」になっていたら幸いです。
さまざま角度からお茶の魅力を伝えていきますので、次のお話もどうぞお楽しみに。
今日はこれまで。
ほな、さいなら。